AWSは2026年5月8日、AWS欧州ソブリンクラウド(ドイツ)でAmazon EC2 G6インスタンスの提供を開始した。G6はNVIDIA L4 Tensor Core GPUを最大8基搭載し、GPUあたり24GBメモリ、最大192 vCPU、100Gbpsネットワーク、7.52TBのローカルNVMe SSDを備える。CPUは第3世代AMD EPYCで、自然言語処理、機械翻訳、動画・画像解析、音声認識、パーソナライゼーションといった機械学習ワークロードと、リアルタイムCGレンダリングやゲームストリーミングなどグラフィックス処理の双方を想定する。
今回の発表の要点は『どのGPUが使えるようになったか』ではなく、『どの主権境界の内側でGPUが使えるようになったか』にある。G6自体はフランクフルト、ロンドン、パリ、スペイン、ストックホルム、チューリッヒ、東京など既存リージョンで提供済みだが、AWS欧州ソブリンクラウドは通常の欧州リージョンとは独立した運用境界を持つ。AWSの公開情報によれば、このクラウドはEUに居住する欧州AWS社員のみで運用され、顧客データと運用メタデータが欧州域内に保持される設計になっている。
この設計は、EU AI ActやGDPR、各国のセクター規制を前提にする金融・医療・公共機関にとって意味が大きい。従来、主権要件の厳しい案件ではGPU必須のモデルを諦めるか、オンプレやローカル事業者を選ぶ必要があったが、同じAWSの運用系譜で動くG6が主権境界内に入ったことで、推論基盤の選択肢が揃った。購入オプションもオンデマンド、スポット、Savings Plansが初日から利用できる。
日本企業への直接的影響は限定的だが、欧州子会社や欧州顧客向けSaaSを運営する日本企業にとっては、欧州拠点のAI提供方式を再設計する材料になる。