AWSは2026年5月13日、Machine Learning Blogで「Navigating EU AI Act requirements for LLM fine-tuning on Amazon SageMaker AI」を公開した。記事はEU AI Actが汎用AIモデル(GPAI)に課す義務、特に訓練計算量に基づく区分を、SageMaker AI上でファインチューニングを行う事業者の視点から解説している。

中核となるのが、aws-samplesリポジトリで併せて公開された「Fine-Tuning FLOPs Meter」だ。amazon-sagemaker-generativeai/0_model_customization_recipes配下に置かれ、flops_meter.pyとして実装されている。教師ありファインチューニング(supervised finetuning)のレシピに組み込む形で、訓練中に消費される浮動小数点演算量を累積測定する。EU AI Actが定めるシステミックリスクGPAIの閾値(訓練に用いた計算量が一定値を超えるモデル)に対し、自社の微調整ジョブがどこに位置するかを実測値で記録できる。

意思決定に直結する論点は二つある。第一に、ファインチューニングがどの時点で「新たなGPAIモデルの提供」と見なされるかは事業者責任で判断する必要があり、訓練計算量の証跡は一次証拠になる。第二に、参照実装が公式ブログとaws-samplesで揃ったため、SageMaker AI上での欧州向けLLMカスタマイズは「規制対応文書がそのまま出せる」運用に近づいた。

日本企業への含意も明確だ。EU市場向けにLLM派生モデルを提供する場合、AI Actは域外事業者にも適用される。微調整時のFLOPsログを取得する仕組みを今のうちに運用に組み込むかどうかで、欧州顧客への提案時に提示できるコンプライアンス証跡の厚みが変わる。