Aderantは法律事務所向けの業務管理SaaSを提供する企業で、自社のクラウド運用業務にAmazon Quickを導入した事例をAWSの機械学習ブログで公開した。注目すべきは、クライアント(法律事務所)のデータには一切AIを触れさせず、自社のクラウド運用に関わる社内データだけをAI活用の対象にしている点だ。
具体的な成果として、6つのベンダーシステムを横断する検索は従来30〜45分かかっていたものが3〜5分に短縮され、90%以上の時間削減を実現した。ナレッジベース記事の作成は1時間から15分に縮まり、月間生産量は200%増加。クライアント履歴の調査も2〜4時間から2〜3分へと95%削減された。38名のクラウド運用チームで稼働するCloudOps Helperボットは、強制ではなく自発的な利用率が95%に達している。
技術構成は、Amazon Quickの既製インテグレーションに加え、3つのMCP(Model Context Protocol)サーバーを組み合わせて6システムを統合する形をとり、カスタム開発なしで数週間以内に本番稼働させた。
日本のリーガルテック・FinTech・医療系SaaSベンダーにとっては、「顧客データに触れずにAI機能を載せる」という規制産業特有の制約を、アーキテクチャレベルでどう設計するかの具体例となる。PoCの稟議で他社製品と比較する際、検索時間90%削減・利用率95%・導入数週間という数値は、自社目標の基準値として活用できる。一方で、AderantはAWS既存ユーザーであり、Microsoft 365中心の企業がCopilotではなくQuickを選ぶ判断材料は本事例だけでは得られない点には注意したい。