RustPBXは、SIPのUDP/TCP/WebSocket/TLSに加えWebRTCまで含めた全スタックをRustで実装したB2BUA型のソフトウェア定義PBXで、GitHubでMITライセンスのコミュニティ版が公開されている。スター数は614に達し、通信ミドルウェア領域のOSSとしては立ち上がりが早い部類に入る。
設計上の核心はHTTP Routerだ。着信したINVITEをすべて外部のWebhookに転送し、受け取ったJSONに従ってルーティング・録音・AI処理を決定する。これにより、従来Asterisk系で必要だったdialplan記述やAGI/ESLといった独自プロトコルの学習が不要となり、一般的なWebアプリケーションの延長でコールフローを書ける。LLMによる動的な応対分岐やCRM連携も、HTTPリクエスト1本で差し込める構造になる。
性能面では、0.4.0のベンチマークとして16コア/32GB環境で同時800通話・メディアプロキシ全有効の条件下でパケットロス0%、CPU使用率155%、メモリ264.8MBという数字が示されている。Rust実装らしくメモリフットプリントが小さく、1ノードあたりの密度を高めやすい。
AI統合ではオフライン文字起こしエンジンSenseVoiceを採用できる点も重要で、通話音声を外部クラウドに送らずに転写できる。個人情報を扱う業種での採用ハードルを下げる構成だ。
一方で、商用版(VoIP卸売機能、IVRビジュアルエディタ等)は別提供となっており、MIT版で何がどこまでできるかの線引きは導入前に確認しておく必要がある。既存のAsterisk/FreeSWITCH資産からの移行コストや、SBCとしての運用実績はこれから積み上がる段階である点も踏まえて評価したい。