AWSは2026年5月12日、Amazon EC2向けENA ExpressがAZ間トラフィックをサポートしたと公式の「What's New」で発表した。ENA Expressは、AWS独自のSRD(Scalable Reliable Datagram)プロトコルをEC2のElastic Network Adapter上で活用し、単一フローのスループット引き上げとテールレイテンシ低減を実現する機能で、これまでは同一AZ内のEC2間通信に限定されていた。
今回のアップデートにより、同じ仕組みがAZをまたぐEC2間通信でも利用可能になった。EC2ユーザーガイドの「Improve network performance between EC2 instances with ENA Express」および「Monitor network performance for ENA settings on your EC2 instance」が更新され、設定方法とモニタリング指標が一次情報として整理されている。AWS Networking & Content Deliveryブログの「Using ENA Express to improve workload performance on AWS」もワークロード適用の指針として参照できる。
影響が大きいのは、マルチAZ冗長を前提にした分散システムだ。分散DBのクォーラム通信、分散キャッシュのレプリケーション、MPIや集合通信を用いる中規模HPC、AZ分散の分散学習などで、これまで「同一AZに寄せて性能を取るか、AZ分散で可用性を取るか」の二択を迫られていた設計が、両立可能な選択肢を持つ。
実装着手時の注意点として、ENA Expressは対応インスタンスタイプとドライバ要件があり、すべてのEC2世代で自動的に有効になるわけではない。CloudWatchのENAメトリクス(ena_srd_*系)で実際にSRDフォールバック率や有効化率を測り、有効化前後のp99レイテンシ・スループットを比較したうえで、本番適用範囲を切り分けることが望ましい。