Google I/O 2026 の発表ポイント

何が発表され、なぜ効くのか。公式の言葉も引用しながら一つずつ。

全体の転換: 「機能追加」から「製品の作り直し」へ

Google I/O 2026は、過去数年のように「既存製品にAI機能を追加した」イベントではない。基調講演でSundar Pichaiが提示した数値は、月間トークン処理量3.2京 (前年比7倍)AI ModeのMAU 10億Geminiアプリ MAU 9億超 (前年比2倍以上)2026年capex見通し1,800-1,900億ドル (2022年比約6倍) と、単発機能の話ではない。これは検索・Workspace・モバイルアプリ・クラウドのすべてをエージェント前提で作り直す宣言であり、本イベントの本質はそこにある。

Our full-stack approach to AI — from infrastructure to research to products — is what makes this moment possible.

基盤モデルの世代交代: Gemini OmniとGemini 3.5

基盤モデル側では2本の発表が中核を占める。1本目はGemini Omniで、テキスト・音声・画像・動画をネイティブに同一モデルで処理する。これまで音声系・映像系が別モデルだった構成が1本化されたことで、エージェント実装側はモダリティごとの前処理パイプラインを持たずに済む。2本目のGemini 3.5は推論・長文・コーディングを強化したフラッグシップで、Gemini 2.5世代から1年弱での世代交代となった。Gemini 3.5 FlashはAI Modeの新デフォルトモデルとして本日より全世界提供開始されており、10億MAUの推論需要を支える主力に置かれている。

Gemini 3.5 Flash is rolling out as the new default model for AI Mode globally starting today.

Flash系の階層整理も同時に進んだ。Vertex AIではGemini 3 Flash Previewが利用可能になり、廉価帯のGemini 3.1 Flash-LiteはGAに到達した。社内でFlash系を運用する開発チームは、3.5 Flash・3.1 Flash-Lite・既存2.5 Flashの3点でユースケース別の単価/精度を測り直す局面に入る。

検索のエージェント化: 検索ボックスが「入口」から「実行点」へ

読者の意思決定に最も大きく効くのは検索の変化だ。AI Modeはリリースから1年で月間10億ユーザーに到達し、クエリ数は四半期ごとに2倍以上で伸びている。I/O 2026ではこのAI Modeを検索の新デフォルトとして全世界に展開し、検索ボックス自体をエージェント入口に置き換えた。

AI Mode has reached 1 billion monthly users in just one year, with queries more than doubling each quarter.

検索内エージェントは予約・購入・比較といった取引タスクを検索内で完結させる方向に進む。これは10青リンク経由の流入を前提にしてきたメディア・EC・アフィリエイトにとって構造変化であり、TechCrunchが「Google Search as you know it is over」と表現した文脈と整合する。読者がメディア運営側であれば、AI Mode本格化後30日間のオーガニック流入とCVRをGSC/GA4で実測し、検索経由売上のうちAI Mode起点比率を定義し直す必要がある。

Workspaceとアプリ: 音声起案とエージェント実行

プロダクティビティ側ではDocs Liveが今夏、サブスクライバー向けに展開される。音声入力でドキュメントを起草・編集できる機能で、ホワイトカラーの起草工程を音声前提に切り替える。Geminiアプリ側も次世代エージェント機能を投入し、9億MAUのコンシューマ動線で複数ステップのタスク実行を可能にした。

The Gemini app is evolving into a true personal AI agent that can take multi-step actions on your behalf.

インフラ: 第8世代TPUで推論単価を押し下げる

基盤を支えるのは第8世代TPUで、訓練用8tと推論用8iの2チップ構成を取る。8tは前世代比約3倍の演算性能を持ち、これがGemini OmniとGemini 3.5の学習を支えた。capex 1,800-1,900億ドルの大半はここに投じられる構造で、推論単価の継続的な低下圧力が読み取れる。自社推論基盤を持つ企業は、Vertex AI経由のFlash系単価と内製GPU基盤のTCOを四半期ごとに比較する運用に切り替える価値がある。

カテゴリ横断の方向性

6カテゴリの発表を横断して見えるのは、Googleが「モデル・検索・アプリ・インフラ」のすべてを同じエージェント抽象に揃えにいったことだ。Gemini Omniで入力モダリティを統一し、Gemini 3.5で推論を引き上げ、AI Modeで検索を実行点に変え、TPU 8iで推論コストを押し下げる。各層が独立した強化ではなく、エージェント体験を成立させるために連動している。

3ペルソナへの実務影響

プロダクト担当は、自社サービスがAI Mode内のエージェント実行に乗るか、検索流入を前提に外側に立つかを選ぶ局面に入る。EC・予約系であればAI Mode内タスク完結を新規獲得チャネルとして定義し、メディアであれば流入KPIの再設計が先になる。

経営層は、capex 1,800-1,900億ドル規模の投資競争に対して自社が「Google基盤に乗る」「独自モデルで戦う」「両建てする」のどれを取るかを決める。純モデル販売を狙う新興AIへの投資判断は、Gemini 3.5/Omniと第8世代TPUの単価優位を織り込んで再評価する必要がある。

エンジニアは、Vertex AI Model GardenでGemini 3 Flash PreviewとGemini Omniを同一プロンプトで動かし、マルチモーダル入力時の精度とレイテンシを社内ベンチで切り分けることが最初の一手になる。Gemini 2.5 Flashで稼働中のワークロードがあれば、Gemini 3.5 Flash・Gemini 3.1 Flash-Lite GAとの3点比較を2週間以内に終えると、年内のコスト計画に反映できる。