NVIDIAとSAPは2026年5月12日、SAPの年次イベントSAP Sapphireで自律AIエージェント領域での連携拡大を発表した。NVIDIA創業者兼CEOのJensen Huang氏がSAP CEOのChristian Klein氏のキーノートにビデオで参加し、両社の取り組みを公表した。
中核となるのは、NVIDIAがオープンソースで提供する自律エージェント実行ランタイム「OpenShell」のSAP Business AI Platformへの組み込みだ。OpenShellは隔離実行環境、ポリシー強制、インフラレベルの封じ込めを担い、エージェントのロジックが想定外の挙動をした場合でも被害範囲を限定する役割を持つ。一方、SAPの「Joule Studio」はそのアクションを実行すべきかを判断するエンタープライズ制御層として機能し、OpenShellと組み合わさることで「判断」と「実行封じ込め」の二層防御を構成する。
さらに、NVIDIAの自律エージェント開発リファレンスブループリント「NemoClaw」がJoule Studio内から直接利用可能となる。SAPのエンジニアはOpenShellのオープンソース開発にも共同参加し、ランタイム強化、ポリシーモデリング、企業ID統合、監査フックといったエンタープライズ要件に必要な機能の実装に貢献する。
この発表が重要なのは、自律AIエージェントが企業の基幹システムに踏み込む段階で最大の障壁となっている「実行時の信頼性」をベンダー公式の組み合わせで提示した点にある。これまでアプリケーション層のガードレールに依存してきた設計に対し、ファイルシステム・ネットワーク層でポリシーを強制する仕組みが標準として提供されることで、SAPに基幹データを置く企業はエージェント本番導入の審査基準を具体化しやすくなる。