2026年4月28日にAWSが公開した『Executive Insights from the 2026 AWS Life Sciences Symposium』は、製薬・生命科学領域のAIが実証段階から本番運用段階へ移行しつつあることを示す事例集となった。中心は3つの構成要素に整理できる。
第一に、Eli LillyのAI統合プラットフォーム『Cortex』である。3年間で1モデルから52モデルへ拡張され、約60のエンタープライズアプリを含み、製造部門以外のほぼ全従業員が利用している。AIを『個別プロジェクトの成果』ではなく『全社インフラ』として扱う運用モデルが示された。
第二に、Bristol Myers Squibb、Sanofi、PfizerによるAmazon Bedrock AgentCoreの活用である。3社ともエージェントの構築・展開・運用までを行っており、エージェント技術がPoCを超えて製薬の業務フローに入り始めた。
第三に、新サービス『Amazon Bio Discovery』の発表である。計算設計と湿式実験検証を統合したAI搭載アプリケーションで、Manas AIはMPI(Manas Pocket Identifier)と3MP(Manas Medicine Making AI Platform)をAWS上で稼働させ、新規アロステリックポケットの発見から化合物生成までを連携している。
一方でDeloitte調査では、AIスケール化に成功したと自己評価するライフサイエンスリーダーは22%、大きなリターンを報告するのは9%にとどまる。先行勢と残りの企業の差は今後の創薬スピードに直結する。日本の製薬・バイオ企業にとっても、セマンティックデータ層の整備とエージェントを自ら作るビルダー文化の醸成は、即座に参照すべき具体的指針である。