EUのAI Actを巡る動きが、2026年4月時点で「抽象的な法制度の議論」から「業界別の実務対応」に移っている。

第一の動きは医療機器・体外診断分野だ。5月22日に予定されているQMS無料セミナーは、2026年最新の動向からEU・英国の医療機器/IVD規制を読み解く内容で、AI ActとMDR・IVDRの接続が主要論点となる。医療機器ソフトウェア(SaMD)が高リスクAIシステムに該当する場合、既存のQMSに加えてAI Act固有の要件(データガバナンス、ログ、人間による監視、透明性)を設計に織り込む必要がある。

第二の動きはAIガバナンス・形式証明の実証だ。オンザリンクスとGhostDrift数理研究所の戦略的パートナーシップは、AIの挙動を形式手法で保証する領域に国内資本が動き始めたことを示す。従来のテスト主導の品質保証では説明責任を果たしにくい高リスクAIに対し、形式証明は監査証跡と親和性が高い。

第三の動きはマネージドサービスの再定義だ。DXCが発表した『DXC OASIS』は、AI時代のマネージドサービスを標榜しており、運用・ガバナンス・監査を一体で提供する方向にグローバルSIが舵を切った証左になる。

日本企業への含意は明確だ。EU域外であってもEU市場に提供する製品・サービスはAI Actの対象になる。医療機器であれば二重適合、生成AIを組み込んだB2Bサービスであれば透明性・ログ・リスク管理の文書化が必要になる。生成画像の信頼性論点もここに接続し、業務利用時の検証プロセス設計が経営課題として浮上している。着手の遅れはEU向け出荷スケジュールに直結するため、適合ロードマップの定義を今四半期中に行うことが実務上の分水嶺となる。